ブックカフェ通信~その16~ 「居場所」について考える

   

こんにちは、松井です。

今日は14時からライフデザインカフェ。僕の中学生時代の友人で、接待飲食店(所謂キャバクラ)で働く方がゲスト。接客業をずっとやっていた、ということで、コミュニケーションについて深堀するお話ができればと思います。

また、11月5日にもイベントが決まりました。

トークイベント 「主体的な活動をはぐくむ場所ブックカフェ&としまアートステーションZ」

2016年11月5日(土)午後3時~5時 みらい館大明ブックカフェ

事例提供者

石幡愛さん(としまアートステーション構想事務局)

荘司哲夫(みらい館大明) 他

司会・進行

岸井大輔さん(劇作家)

参加費

社会人のみ 500円 学生 無料 定員30人

お問合せ・申込

みらい館大明 03-3986-7186

taimei.bookcafe@gmail.com

 

さて、久々のブックカフェ通信は、「居場所」について、少し真面目なお話を書きたいと思います。

”中高生がつくる中高生の居場所”ジャンプ長崎を事例に考える

6月ごろから、ライフデザインカフェを行うにあたっての調査も兼ねて、豊島区内の中高生センター「ジャンプ長崎」へ隔週で行っています。中高生の動向やどんなことに興味があるのか、どんな子たちは使っているのか、など。

と言っても、2年前に半年ほど職員をしていたので、割と情報はあるんですが。とはいえ、2年前に働いていた頃、利用していた高校生の大半はもう卒業したし、中3だった子は高2、小6は中2と、利用者の雰囲気もトレンドも2年前はとっくに「古い」情報となっています。

子どもたちの学年を確認するたび毎度自分が歳を取ったことに気付かされます。。。

さて、この「ジャンプ」は、平成24年4月に開館した豊島区の施設です。

以下、区役所の専用ページから引用。

中高生センタージャンプ長崎は、平成24年4月に開館した豊島区の施設です。

建物は小型児童館(元の長崎第二児童館)のまま、内装を中高生仕様にして「中高生センタージャンプ長崎」になりました。中高生にとって、自分にも、他の人にも、居心地の良い場になるようにように、利用する中高生が自分で考え、いろいろな試みをしています。

だから、ジャンプ長崎は中高生が作る中高生の居場所なのです。

中高生と共有ですが、一部の部屋を高学年の小学生と乳幼児と付添の方にも開放しています。

詳しくは、こちらをご覧ください。

 

そんなこんなで、昨日もお邪魔してきたのですが、毎度毎度行くたびになんとも言えない気持ちを帰ってきます。

なんとも言えない、ので、あまり深く説明はできませんが、、、

 

自分たちで試行錯誤せずに得られる「居場所」

細かいことを書くと誤解を受けるような書き方になりそうなので、割愛しますが、僕が実感したのは、多分「与えられたものが多すぎる」ことが原因なのかな、なんて思いました。

自分たちの努力などを通して手に入れたモノ、情報、場所がほとんどないんじゃないかな。

小学生の頃に既に準備された「場所」、そこに行けば持っていなくても使うことができる「モノ」、そしてインターネットですぐに得られる「情報」。

自分にとって「居心地のいい場所とはどこか」とか、自分が欲しいものはなにかとか、○○はどういう意味なのか、なぜこれをしなくてはいけないのか、など、本来自分たちで試行錯誤を繰り返して手に入れるべきモノを、社会が与えてくれる。

今回の事例でいえば、「ジャンプ」にさえ行けばほとんどのものは手に入るのだ。

勉強部屋も、楽器を鳴らせるスタジオも、Wiiも、卓球も、漫画も、iPadも、一人で行ったら職員が相手をしてくれる。

僕らの時代は複数あった場所が一つに集約され、かつ、子どもの面倒も見てくれる職員もいる、となれば、こんな夢のような場所はないと思う。親御さんにとっては安心の一言に尽きるだろう。

きっと、この場所がなくなれば困る子が多いし、そもそもは中高生の遊び場や行き場がないことを背景に作られたので、申し分のないほどに機能している。もちろん、それは評価されるべきことだし、職員の方々や当事者である中高生たち努力があったからだろう。近隣住民の理解を得るのにもすごく時間が掛かったことも知っている。

ただ、僕の目には2年前に「通過点」として使っていた子たちに比べ、「依存度」を感じたのだ。

この場所がなくなればどこへも行くことができなくなる。そんな空気を感じすらする。

自分で居場所について考えて、自分たちで作ったことのない子たちが大人になったとき、果たして自分で「本当の居場所」を作りだすことはできるのだろうか。

 

これから僕たちがやるべきこと

時代も社会も変化するので、ニーズも変われば、必要とされるサービスが変わるのも当然だ。

僕が高校生だったのは10年前だし、当時と比べて社会もめまぐるしく変わった。

それでも、本質的なことはそこまで変わっていない気がするのだ。

どこで買えば一番駄菓子を安く買えるのか、メンバーが集まりやすいスタジオはどこか、受験勉強に最適な自習室はどこか?、自分の持っていないゲームをやれる場所はどこか…

児童支援(小学生~高校生)を考えてたとき、一番大切なのは「与えること」ではなく、「止まって考えさせること」「考えたことを実証してみること」ではないだろうか。

とすれば、僕たち大人が本当にやるべきことは、環境を整え続けることではなく、彼らに「問いかけ続けること」ではないだろうか。

どうやったらそれができると思う?やってごらん、といって見守る。上手くいけば解決、失敗したらどうやればうまくいくかを一緒に考える。

本当に僕らがやるべきことは、対処療法のごとくすぐに解決するのではなく、粘り強く見守り続け、子どもたちと真摯に向き合うことではないだろうか。

 

本当の居場所は与えられるものではない

僕らコーディネーターは常々、ブックカフェを説明するときに「若者の居場所」という言葉を避けるようにしている。それは、「居場所」とは、自分で作るものであり、与えられるものではないからである。

職場にしても家にしても、それ以外にしても、「自分がそこにいる意味」を考えて、その場を自分の「居場所」となるように試行錯誤を繰り返す。そして、自分とって居心地のいい場所を作り上げていく。

ブックカフェにしろジャンプにしろ、あくまで「居場所になりえる場所」であって、「当事者にとっての居場所」かどうかは本人が決めることである。

彼ら彼女らが卒業して社会人になったとき、自力で居場所を作る力を身につけさせるのが、僕らの仕事なのではないだろうか。

 

 

ちなみに、サードプレイスはあくまで給水所であってホームではない。という話はまた今度。

 


 

ブックカフェコーディネーター そうま

豊島区生まれ豊島区育ち。平成元年生まれ、ガンディーと同じ誕生日。

保育園から高校まで豊島区内の学校へ通い、一浪したのち東洋大学文学部インド哲学科へ進む。

バンド活動とアルバイトに明け暮れる大学時代を過ごし、卒業後は広告制作会社で勤務。

退職後、板橋区の子ども支援事業「あいキッズ」豊島区中高生センター「ジャンプ長崎」、「みらい館大明ブックカフェ」などで、小学生~若者支援を行う。

現在みらい館大明、みらい館大明ブックカフェの職員。

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