毎月1冊読書感想、担当田場川さん

   

『世界はなぜ地獄になるのか』 (橘 玲著 小学館新書 2023年8月)

豊島区学習・スポーツ課で若者学びあい事業を担当している田場川です。
私が選んだ本は、『無理ゲー社会』『バカと無知』などの著作がある橘 玲さんの新刊「世界はなぜ地獄になるのか」です。
「誰もが自由に生きられる社会は、こんなにも不自由だ」という帯の文言と、『世界はなぜ地獄になるのか』というタイトルに惹かれて本書を手にしました。

「リベラルな社会になればなるほど世界は地獄になる」。
確かに、個性を発揮しましょう、個性を大切に、と声高に叫んでも、その個性を認め合う風土がなければ、差別や排除が進み、生きづらい世の中になってしまいます。
匿名で自由に議論を展開できるインターネット上では、どのような言葉で炎上するか分からず、コロナ禍ではマスク警察や自粛警察など、様々な価値観の人が、それぞれの正義をふりかざし、他人を批判したり糾弾していました。
現代社会は、これまでにも増して他人の目を気にしなければならない世の中になってきているのではないかと感じます。

著者は、自分の身を守る方法は、リアルでもネットでも「極端な人」に絡まれないこと、個人を批判しないこと、と述べています。
また、本書では、すべての理想を叶える政治制度は存在せず、誰もが不満を抱えつつも、ほどほどのところで妥協するしかない。これが「寛容」と「中庸」であり、現時点ではこれ以外の解が存在しない。と結論づけています。

各々が各々の正義を振りかざし、他人の言葉や思いに耳を傾けないままでは、これらの傾向は止まらないのではないでしょうか。
「寛容」と「中庸」を胸に、表に出てくる他人の言動だけでなく、その人の背景にも思いを馳せることのできる人間になりたいと思いました。

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