その8『パイロットフィッシュ』大崎善生

   

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人は、一度めぐり合った人と二度と別れることはできない―。
午前二時、山崎のもとにかかってきた一本の電話。受話器の向こうから聞こえてきたのは、十九年ぶりに聞く由希子の声だった…。記憶の湖の底から浮かび上がる彼女との日々、世話になったバーのマスターやかつての上司だった編集長の沢井、同僚らの印象的な姿、言葉。現在と過去を交錯させながら、出会いと別れのせつなさと、人間が生み出す感情の永遠を、透明感あふれる文体で繊細に綴った、至高のロングセラー青春小説。吉川英治文学新人賞受賞作。
(Amazon『パイロットフィッシュ(角川文庫)』ページより)

「パイロットフィッシュ」ってご存知ですか?
熱帯魚などを水槽で飼育する際、先に水槽で飼育して目的の魚に適した環境を作り上げるために利用する魚のことを言います。(ウィキペディアより引用)
この本を読み終えたとき、その意味がわかったような気がします。

主人公の山崎の大学時代の姿は、実際によくいるんじゃないかな、と思いました。
上京してきて、キャンパスになじめず、どこか疎外感を感じていること。
大学をやめたいと思っていても、そこまでするほど意志は強くないこと。
そんな中で現れたのが由希子。彼にとって彼女はどんな存在だったんでしょうね。

ずっと水に浮かんでいるような、穏やかなストーリーです。
20代後半~30代以上の方が読むと、なつかしい人に会いたくなるかも。

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